この本、確かに東洋学の殿堂・東洋文庫の100年の歴史を的確に紹介している。編者の巧みな構成で、硬軟織り交ぜた編集がなされており、東洋学とは無縁な一般読者にもアクセスしやすい。編者の苦労を多としたい。
本書を高く評価する方々は多いだろうから、この場では逆に「イマイチ」の点を列挙したい。
(1)「その他の東洋文庫の各コレクションの概略」ーーこれは紙幅の関係もあっただろうが、きわめて中身が薄く、しかも執筆者自身の能力と知識不足などで見るに堪えない低いレベルの読み物となっている。各分野の専門家に執筆を依頼すべきであった。
(2)東洋文庫の主軸は中国学であることは、その通りである。しかし、中国の周辺にある日本学・朝鮮学・ベトナム学・モンゴル学などの周辺の地域学に関する説明もあってよかったのではないだろうか。
(3)東洋学の一つの構成要素である朝鮮学に関する記述があまりに貧弱であり、前間恭作・鮎貝房之進・小倉進平・末松保和・武田幸男・田川孝三先生をはじめとする朝鮮学の先達たちの紹介にも紙面を割いてほしかった。担当は六反田豊君が適任。
0 件のコメント:
コメントを投稿