長谷川伸の名作戯曲『沓掛時次郎』を原作とする『沓掛時次郎 遊侠一匹』(1966年4月1日公開、監督:加藤泰。)に痺れたのは、はるか昔の思い出。池袋の文芸座で毎週土曜日の深夜、5本立ての日本映画を上映していたので、H君(元大学教授)ら旧友3名と共に観覧し、早朝からk君(現在は、自営業)のアパートで映画論を戦わせていたのは、懐かしい思い出。
H君の持論は加藤監督の巧みなカメラアングル、k君の持論は沓掛時次郎論、アウトローゆえの「不条理」であった。
私と言えば、股旅物特有の両義性(山口昌男の心酔者)であり、三者各様の視点からのアプローチであった。
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閑話休題。
沓掛時次郎の「沓掛」は長谷川伸によると沓掛宿に由来するという。沓掛宿とは軽井沢宿・追分宿と共に浅間根腰の三宿の一つ。軽井沢宿は上野国(現群馬県)から険しい碓氷峠を越え、信濃国(現長野県 の玄関口として、沓掛宿は草津温泉へ通じる草津道の分岐点として、追分宿は越後国(現新潟県)へ通じる北国街道の分岐点であった。
ところで、地名として沓掛は
①大分県杵築市大田沓掛上沓掛
②京都府京都市西京区大枝沓掛町
③愛知県豊明市沓掛町
④栃木県日光市沓掛
など、日本各地に多数点在している。
ここで重要なのは、木下良氏などの研究によって、沓掛が古代官道の推定するに一つの有力な材料であることだ。しかも、沓掛とは、これまで
「昔旅人は道中の無事を祈願して山の神様に草鞋・馬沓を掛けて手向けした。これを沓掛」沓掛峠(くつかけとうげ)とは? 意味や使い方 - コトバンク
などのように、旅の平安を祈る民俗との関連で語られてきた。
確かに、この二つは重要な観点である。
はたして古代における「沓」とは何であろうか。どのような沓をどこに、なぜ掛けるのかに関する説明もなく、文字に振り回された民俗学者の方々が、質問者の要求にこたえて回答する典型である。
<参考文献>
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