恵方巻
米国ボストン市にボストン美術館に浮世絵版木520余枚が所蔵されていることは、昭和60年のTBSテレビの報道によって、広く知られることとなった。
私もボストン美術館通いをした身の一人として、その版木群を止目したこともある。
その一枚、19世紀のごく初めに葛飾北斎が作った『絵本墨田川 両岸一覧』中の「高輪の暁鳥」に興味深い絵柄がみられる。「旭 本船乗初 房総春暁」とある絵柄には一艘の船に9人の乗客と2人の船頭が描かれている。左から3人目の人物の半纏に注目すると、その背中にマル印「恵」と染めてある。これが「恵方」を表象する印である。
つまり江戸時代後半、江戸在住の庶民層は正月に恵方を求めて、どこからの神社に参拝に出かける風俗を認めてよい。
ただし、恵方「巻」を説明する確かな資料は未見。管見によれば、2000年代に入り、太巻き販売にかかわる業者が販売拡大促進を狙って、「恵方」を引っ付けたといううわさ話を耳にしたことがある。その理由は、北斎の浮世絵にあるように、正月の行事として「恵方」にある神社への、今で言えでば「初詣」の行事にあったが、それがなぜか節分行事の一つに変化している。こりゃ、不思議。
いずれにせよ、無病息災が一番、おいしく恵方巻を皆で賞味しましょう。
0 件のコメント:
コメントを投稿