2023年5月30日火曜日

対馬藩江戸藩詰家老と太田南畝

 

太田南畝の著に『半日閑話』がある。今や、『太田南畝全集』(岩波書店)第11巻に収録してあるので、読むに不自由はない。南畝の視野・交友範囲は想像以上に広い。さすが当代の人気者であった。大名・江戸詰め各藩の家臣なども含まれていた。

 その一端を示す。『半日閑話』第18巻(全集、第11巻、543)に「対州大森氏の話」とあるのは、対馬藩大森繁右衛門。彼の江戸詰め屋敷で開かれた宴に南畝は招聘され、ひと時の宴の場を持ったらしい。

 対州の碩学、陶山庄右衛門や雨森芳洲、されには義憤にかられて直訴した鹿島兵助などが紹介されている。

 私の関心は対馬の陶山訥庵や雨森芳洲を語るのではなく、その当時、文化度朝鮮通信使招聘に対馬藩江戸屋敷で孤軍奮闘していた江戸詰め家老大森繁右衛門がなぜ幕閣への影響力を有しない南畝を藩邸に招待したか、にある。

 やはり常識的に、時代の寵児と共に一夜の座敷を楽しみたい田舎侍の酔狂か。それとも江戸幕府と朝鮮政府との間で、硬直状態にある外交交渉に疲れた家老の「気晴らし」か。

なお、己の才覚一つで大森繁右衛門は対馬藩の鷹匠から家老まで登った立志伝中の人である。


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