2019年8月3日土曜日

2001年1月10日(水)講義Note異文化コミュニケーション(3)


2001年1月10日(水)講義Note  
    異文化コミュニケーション(3)

7.外国語教授法
(6)心理学から見た異文化コミュニケーション
<6-1> Padilla,Amadoの指摘を待つまでもなく、文化人類学における文化変容研究は、「文化の型」(Cultural Patterns)の変化を追及するにとどまり、異文化接触によって惹き起こされる個人の体験の分析に関心を向けなかった(Padilla ”AcculturationTheory, Models and New Finding”Boulder.Co)。
   役割葛藤
   人間関係
   個人の適応戦術
   個人の認知スタイル
   アイデンティティ
   ストレス

<6-2>これに民族的プライドや帰属意識(Cultural Pride and Affiliation)や非差別的感覚を含む個人の反応を加味して、

   文化的変容(Acculturation)――自集団を否定し、支配的集団を賛美し、積極的な関係を持つ。
   統合型(Intergration)――自集団への帰属意識を保ちながら、しかも優越する集団とも積極的な関係をもつ。
   拒絶型(Rejection)――自集団への帰属意識のみをもち、他の集団へは無関心
   文化廃棄型(Deculturation)――自集団にも、他集団へも関心を寄せない。
という類型化も提案されてきた。

7)外国語教授法
  「教室における教授が単に経験と直感に頼るのではなく、優れた外国語教授理論に依拠して行われるべきである」とはよく聞く話である。確かにその通りであるが、ではいかなる外国語教授法が存在するのか、またいかなるルートを経て、いかなる外国語教授法が成立したのか、あるいは各教授法の長所とその限界は何か、などといった検討は未だ十分に行われていない。
 日本における韓国語教授法研究は若い学問分野であるだけに、はたしていかなる教授法を採用すべきか、授業担当者は大いに迷うところである。ここでは先行研究を参照しながら、欧米で開発された15の教授法の概説を試みながら、幾つかの指針を得ることとしたい。
  さて外国語教授法は19世紀半ば以降、応用言語学の一分野として発展してきた。外国語が対象であるだけに、当該言語に関する正確な言語学的な基礎の上に教授法が構築されなくてはならないが、その他に心理学や社会学、さらには異文化コミュニケーション学などの隣接諸学からの影響を受けながら、さまざまな方法が出現してきた。
①文法訳読法(Grammar-Translation Method
② Psychological Method
③ Natural Method
④ 直説法(Direct Method
⑤ 連続法(Series Method)
⑥ ASTP(Armed services Specialized Training Program)
⑦ Audio-Lingual Method
Harvart Graded Direct Method(GDM)
⑨ 認知論的学習法(Cognitive Approach)
Total Physical Responce(TPR)
⑪ サイレント・ウェイ(Silent Way)
⑫ Community Language Learning
Communicative Language Teaching
(8)Communicative Language Teaching     

1.Communication GapとしてCommunicative Language Teachingの中で繰り返し論議されるのは、コミュニケーションを取る際に生じるGapの存在とその解消である。即ち人と人との間にGapが存在することにより、そのGapを埋めようとしてコミュニケーションの必然性が生まれ、それが学習の動機づけとなるのである。実際にコミュニケーション・Gapの存在する場面を設定し、そのGapを埋めるための学習活動を学習者に提示することによって、学校教育の場でコミュニカティブな学習活動が可能となる。
 Communicative Language Teachingの観点からGapを分類すると、次の通りになる。
  ①インフォメーション・Gap
 ②ジグゾーの原理
 ③オピニオン・Gap
 ④イメージ・Gap
 ⑤カルチャー・Gap
 では、この五つのGapをコミュニケーション活動との関連のもとで説明しておきたい。
 ①インフォメーション・Gapとは、実際にコミュニケーションを図る必要性に迫られた時、はっきりと自分の意志を表現しようとする態度が身についていることが前提となる。そのために話題源を蓄えることや、様々な問題について自分自身の見解を常に持ち合わせる習慣を身につけさせる態度を平素から養っておく必要がある。インフォメーションGapは一人の学習者が他の学習者の知らない情報を持っている場合、この不足情報を相手から入手することが二人のGapを埋める活動になるわけである。この場合、一方だけが、相手の持っていない情報を持っているタイプではなく、両者ともに互いに相手にない情報を持っているタイプもある。
この活動は、単に情報を発信者から受信者へ転移(Transfer)する活動と比べたならば、こちらには情報のGapを埋める動機が存在するので、よりコミュニカティブな活動といる。
②次のジグゾーの原理とは、Jigsaw puzzle からヒントを得た指導技術である。この原理を応用した学習活動では、グループの一人一人に内容の異なる情報を与え、各人は互いに情報交換をしながら、自分のインフォメーション・Gapを埋めて、最初に与えられた課題、即ちもとの絵や文章を完成させるものである。この学習活動では、連続作業の中で互いに相手の情報の正確さを依存し合うために、課題依存(Task dependency)の原理が行われ、言語使用における個人の責任感を養成することができる。
③第3番目のオピニオン・Gapとは、インフォメーション・Gapやジグソーの原理よりも複雑で高度な学習活動である。一人の学習者の考え方が他の人と異なっていて、そのGapを埋めるために、説得や議論が行われる学習活動である。したがってインフォメーション・Gapと同様に、はっきりと自分の意志を表現しようとする態度が身についていることが大前提となる。そのために平素から話題を蓄えておくことや、諸問題に関する自分の見解を常に持ち合わせておくことが大切になる。
④第4番目のイメージ・ギャップが生ずる原因は、基本的には必要な情報が不足していたり、相手に正しく伝わっていないために、誤った判断や印象を持つのと、外見や噂などの個人的価値基準で判断したり想像することから生じるのである。現実の社会では、イメージがコミュニケーションの阻害要因の一つになっていることが多い。特に異文化間では言語や文化の面でGapが大きいので、イメージのGapが拡大されやすい。
⑤最後のカルチャー・Gapとは、異文化間、国際間では言語表現や思考だけでなく、食事や生活習慣などの文化全般の様々な面においてGapが横たわっている。特に日本は、欧米諸国と極めて文化的なGapが大きく、そのGapは外国に関する情報不足と言うよりも、むしろ多くの場合の原因は、日本及び日本人のことが正しく認識されていないからである。したがってこのGapの発信能力は重要な課題となるといる。

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