2019年8月3日土曜日

今こそ、学ぶべき先人の知恵ーーソウル大学校総長のスピーチ


親愛なる九州大学の新入生の皆様
尊敬する九州大学総長をはじめとする先生方
そして国内外の来賓の皆様

 本日、この伝統ある九州大学に入学なさった新入生の皆様に、私はソウル大学校を代表して心からお祝い申し上げます。そして栄えある入学式に、私をご招待くださった梶山千里総長に感謝申し上げます。

 新入生の皆様

 学問と人生の道に新しく旅立つ皆様に対して、「開かれた心を持つ世界人であれ」と私はお勧めいたします。

 振り返れば、20世紀は、人類が飛躍的な発展を遂げた時期であり、日本をはじめとするアジア各国が世界の中で跳躍した時期でありました。しかし一方で、多数の国々が限りなく競争を追求し、2回にわたる世界大戦と数多くの紛争で、人類に言いしれぬ苦痛を与えました。このような苦痛の記憶は、アジアでも、特に、今や世界の中心となりつつある東アジアに多く残されております。

 今や、我々は過去のつらい歴史を教訓として、21世紀を相互発展の時代として作り上げるべきであると申し上げたいと思います。そのためには、互いを心から尊重して、愛情を持って、助け合う心だけで可能となるはずです。

 古くから韓半島と中国をはじめとするアジア諸国との間で、文物を交換してきた歴史を持つ福岡は、今なお国際交流の中心地であります。特に、福岡とソウルは飛行機で1時間ほどの近さの距離にあり、歴史的にも博多港は釜山とソウル、北京へと至る東北アジア交易ロードの始発点の役割をしてきました。

 このような地政学的理由によって、長い歴史の中で、福岡にはたえず新しい文物が流入してきたように、九州大学には、今なおアジア各地から多くの若者たちが集まっています。それゆえに九州大学こそが、「共存共栄の新しい世紀」を作りあげるアジアの宝庫であると、私は信じております。共存と共生の人材を育てる理想的な条件を備えた九州大学に於いて、新入生の皆様がこの21世紀の主役として成長なさることと信じます。

 このような素晴らしい国際交流の中心地において、新入生の皆様は、外国の若者たちを理解し、互いに協力する世界人として成長できるはずであると確信いたします。

新入生の皆様

「開かれた世界人」として成長する初めての歩みは、隣国に対する正しい理解から出発します。そのためにソウル大学校総長である私は、皆様がソウル大学校の学生をはじめとする韓国の多くの大学生と交流なさり、日韓両国の若者の力で、共栄の世界史を作りあげてくださるよう提案いたします。
 福岡は、江戸時代に朝鮮通信使が頻繁に往来したり、中世東アジア交易の盛んな場所でした。

私は、18世紀初め、朝鮮通信使として日本に渡った申維翰と、「誠信の交り」を結んだ雨森芳洲との学問的交流を思い起こします。

現在、九州大学に留学した韓国人の多くは、帰国後、韓国社会の各分野でめざましい活躍をしております。このような歴史的交流の結果として、日本において最初の「韓国研究センター」が九州大学に誕生したと思われます。

 ソウル大学校も、今後、九州大学が構想しておいでである「東アジア大学間の教育と研究交流プラン」に積極的に参加し、九州大学の先生方と学生がソウル大学校おいて研究し、教育を受けることに、最大限の支援を惜しむものではありません。ソウル大学校と九州大学は、地理的、歴史的、文化的なつながりをもとに、一つの学問的共同体を作り上げることが出来ると信じます。
 
 このような歴史的背景に加えて、九州大学が結んできた韓国との独特な学問的つながりこそは、新入生の皆様にとって韓国を理解し、さらには開かれた世界人、心暖かき世界人として成長なさる良い素地になるものと思われます。

 韓日両国の若者たちは、手を携えて、新しいアジアの歴史、さらには世界史を構築しなければなりません。このことは、韓国のソウル大学校とともに、九州大学の皆様に与えられた時代的な使命であります。

新入生の皆様

今や、私たちは最先端科学技術を志向する知識情報化社会に生きております。最先端技術も、人間に対する深い愛情と理解がともにある時に、はじめて価値を持ちます。

 大学生活を始めようとする皆様に、わたしは自分の成功だけではなく、いろいろな学問分野に対する幅広い知識を追求なさることを願う次第です。均衡ある知識を土台として、人間と社会に対する肯定的な価値観を強固に保ち、他者への配慮を欠かさない共生の徳目を生活の中に組み込んでくださるよう願います。そうすれば皆様すべてが21世紀世界化と知識情報化時代の真の主人公となるにちがいありません。

 もう一度、新入生の皆様の入学をお祝い申し上げ、皆様の大学生活に限りない幸せが訪れるように願う次第です。

 重ねて、今まで九州大学が成し遂げられた学問的業績と社会的貢献に敬意を表し、新しく発足した国立大学法人New Kyushu University」の今後のますますのご発展をお祈りする次第です。

 ご静聴ありがとうございました。


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